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コラム2021.5.1

【コラム】DX 投資促進税制の創設

筆者:渡辺 登

はじめに

『DX』とは、デジタルトランスフォーメーション(以下DXといいます)のことです。DXについて、経産省の「DXを推進するためのガイドライン」では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義づけられています。
すなわち、データとデジタル技術を活用して企業変革し、企業の競争力を維持・強化していくことをいいます。
本制度の創設は、ウィズコロナ・ポストコロナの中での新しい働き方(テレワーク、在宅勤務、時差出勤など)推進へ追い風となる制度の導入であり、また、ビジネスの視点からもDXによる新たなビジネスモデルを展開するきっかけとなる制度が創設されたといえるでしょう。

制度の概要

産業競争力強化法に新たな「事業適応計画」の認定制度が創設され、当該計画の認定を受けた青色申告法人が計画に従い同法の情報技術事業適応の用に供するため事業適応設備の取得等をした場合には、特別償却又は税額控除のいずれかが認められます。

具体的な内容

(1)適用対象法人
青色申告書を提出する認定事業適応事業者※1
※1 産業競争力強化法の改正を前提に、同法の事業適応計画の認定を受けた法人をいいます。なお、事業適応計画の認定を受けるためには(2)の要件を満たしている必要があります。

(2)事業適応計画の認定要件

  • デジタル(D)要件
    a:データ連携・共有を行うこと
    b:クラウド技術を活用していること
    c:DX 認定の取得をすること※2
    ※2 情報処理推進機構が審査するレガシー回避・サイバーセキュリティ等を確保すること。
  • 企業変革(X)要件
    a:全社の意思決定に基づくものであること(取締役会等の決議文書添付等)
    b:一定以上の生産性向上などが見込まれること等

(3)適用要件
認定事業適応計画に従って実施される産業競争力強化法の情報技術事業適応の用に供するためにソフトウェアの新設又は増設をし、又はその情報技術事業適応を実施するために必要なソフトウェアの利用に係る費用(繰延資産となるものに限る)を支出すること。

(4)対象資産

  • 情報技術事業適応設備
    a:認定事業計画に従って実施される情報技術事業適応の用に供するために新設又は増設されたソフトウェア
    b:aのソフトウェア又は上記の情報技術事業適応を実施するために必要なソフトウェアとともに情報技術事業適応の用に供する機械装置及び器具備品(産業試験研究用資産を除く)
  • 事業適応繰延資産
    情報技術事業適応を実施するために必要なソフトウェアの利用に係る費用のうち繰延資産となるもの(クラウドシステムへの移行に係る初期費用)

(5)控除額等

  • 特別償却
    取得等した対象資産の額×30%
  • 税額控除
    取得等した対象資産の額×3%※3
    ※3 グループ外の事業者とデータ連携する場合には5%

(6)適用除外
大企業が本制度を適用する場合において、次のいずれにも該当しないときは、税額控除の適用ができないこととされています。

  • 所得金額が前期の所得金額以下であること
  • 継続雇用者給与等支給額が前期の継続雇用者給与等支給額を超えること
  • 国内設備投資額が減価償却費の総額の30%を超えること

注意点

    (1)本制度は、対象資産の取得等の合計額(投資額)について下限と上限が設けられています。
     下限:投資額が売上高の0.1%以上
     上限:投資額が300億円まで

    (2)所有権移転外リース取引により取得した情報技術事業適応設備は特別償却の適用対象外となります。

    (3)カーボンニュートラル投資促進税制と合わせて法人税額の20%が税額控除額の上限とされています。

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