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コラム2025.11.1

【コラム】オンライン調査等

筆者:沖田 百世

はじめに

国税庁は、令和7年9 月からガバメントソリューションサービス(以下「GSS」といいます。)を段階的に導入していくことを公表しました。これに伴い、全法人及び個人を対象として、税務調査等において必要に応じオンラインツール(インターネットメール、Web会議システム又はオンラインストレージサービス)を利用する予定であるとのことです。本稿では今後活用が広まっていくと思われるオンライン調査等について、関東信越税理士会のホームページ(<国税庁からのお知らせ>調査等におけるオンラインツールの利用等について – 税理士会会員向け │お知らせ)で公表されたPDF 資料を基にご紹介いたします。

背景にオンライン需要の高まり

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、大規模法人を中心に、Web 会議システム等のオンラインツールを利用した調査対応を要請されるケースが多く認められていました。令和2 年7 月からリモート調査が導入されましたが、当初は完全なリモートではなく、調査官が対象会社に訪問し、対象会社のネット環境、機器等を利用して別室の会社担当者とやり取り等を行う臨場・対面抑制型調査方式でした。

令和4 年10 月からは、国税局の特官所掌法人(資本金40 億円以上の一定の法人)を対象としたリモート調査が実施され、調査官が訪問することなく、Web 会議システムを利用した概況聴取、オンラインストレージサービスによる帳簿データの受渡しが行われるようになりました。さらに、令和5 年7 月からは対象が全ての大規模法人へ拡大され、今回導入されるオンライン調査等の前身となっております。

GSS の導入

国税庁は、納税者の利便性向上の需要のみならず、行政業務の効率化を図る観点から、税務行政のデジタル・トランスフォーメーションに取り組んでいます。令和7 年9 月から導入されるGSS は、デジタル庁が提供する政府共通の標準的な業務実施環境(業務用PC やネットワーク環境)であり、安全性・利便性・効率性の高い行政業務の実現を目的としております。

GSS の導入に伴い、国税庁ではMicrosoft365 が導入され、Outlook によるインターネットメールやTeams を通じたWeb 会議など、外部とのやり取りが可能になります。その他にもAcrobat を用いたPDF の閲覧が可能となるなど、従前のアナログ対応がデジタル化され、飛躍的に作業効率が高まる形と考えられます。GSS 端末は全職員1人1台配備され、調査等において携行される予定です。

オンライン調査等の概要

GSS 導入を機に、大規模法人のみを対象に試行されていたオンライン調査等が、中小法人等や個人にも対象が広がり、所得税、相続税等の資産税を含む全税目を対象に段階的に実施されていくこととなりました。これまでの調査等では、連絡は電話で行い、面談は対面、資料のやり取りは郵送で執り行うことが一般的でしたが、オンライン調査等の活用により、納税者及び調査官双方が効率的に調査等に対応できるようになると見込まれます。税務調査、行政指導、書面添付制度に係る意見聴取において、オンラインによる調査等により、次のようなやりとりが実施されます。

  • インターネットメールの利用
    事前通知後、調査官との連絡にてメールを利用することで、調査で必要となる資料依頼やデータの受渡し等がメールで行われます。税務調査の事前通知は従来どおり、原則電話等の口頭で実施される見込みです。
  • オンライン面談の実施
    WEB 会議システム(Teams)を利用して、調査等に係る質問や回答等のヒアリングが行われます。
  • オンラインストレージサービスによるデータの受渡し
    インターネットメールやe-Tax のほか、オンラインストレージサービス(PrimeDrive)を利用して、調査官から求められた帳簿書類等の資料のデータの受渡しが行われます。


実施に際しては事前同意が必要

オンライン調査等の実施は強制ではなく、あくまで任意のものであり、利用にあたってはインターネット利用によるリスク等への理解など、事前に納税者の同意を得て進めることになります。インターネットメールの利用を例にとると、国税局・税務署より納税者・関与税理士に対してメール利用の意思確認を行った上で、Microsoft Forms を通じてオンラインツールの利用に関する同意事項等を登録します。その後、テストメールをやり取りし、受信状態を電話で確認することで準備が整います。


また、オンラインツールは必要に応じて行われるため、連絡はメールで行い、面談は調査官と納税者が直接対面で行うというケースも想定されるようです。

今後の展望

令和7年9月からGSS 導入を開始するのは、金沢国税局及び福岡国税局とその管内税務署となっており、同月以降にオンライン調査等の対応が始まります。その他の国税局等及び管内税務署は、令和8年3月から順次導入し、全職員への配備完了は令和8 年6 月末となる見込みです。

調査官がGSS 端末を携行することで申告書データ等が確認できるため、税務調査時に会社側で申告書の控えを用意するということも無くなると考えられます。事務手続きの面からも今後のオンライン調査等の対応の拡大が望まれます。

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