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コラム2024.1.1

【コラム】遺言書はより身近なものとなるか ~遺言書方式の変遷とデジタル遺言の将来について~

筆者:大塩 弘江

はじめに

遺言書を作ろうと考えたことはありますか?
まだまだ先の話なので・・・、
そろそろ考え始めないといけないけどどうしたらいいのかわからなくて・・・、
いよいよ本格的に考えていますが実際作るとなると色々とハードルが高くて・・・、
このようなお話をよく耳にします。
私自身も遺言書を作成しようとなった場合には、やはり煩わしさを感じると思います。
なぜでしょうか?

遺言書の種類について

自筆証書遺言

遺言を作成する人が、原則、全文を自筆で書く遺言書です。財産目録については、パソコンで作成しても問題ありません。
自筆証書遺言の場合、いつでもどこでも自分1 人で気軽に書くことができるという手軽さはありますが、

  • 誰にどの財産を渡したいのかを書けばいいのだろうけど、具体的にはどのような内容を書けばいいのかわからない。
  • 決まった形式で書かないと無効になってしまうと聞いたことはあるけれど、実際どのように書いたらいいのかわからない。
  • 作って書いたはいいけれど、自分がいなくなった後で見つけてもらえるのだろうか。


このような、疑問と不安のオンパレードです。
この問題をある程度解決することができるのが、2020 年7月から始まった「自筆証書遺言保管制度」です。

自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言の一歩進んだ方法として、近年登場したのが「自筆証書遺言保管制度」です。
書式は通常の自筆証書遺言と同じですが、法務局が遺言書の書式を満たすかどうかの外形的なチェックを行い、適合したものについて法務局が保管を行うという制度です。
遺言書の形式の確認をしてもらえるので、せっかく作ったものの無効になってしまうといった事態は防げること、作成した遺言書は本人の閲覧が可能なこと、内容に関し不備が生じた場合は一旦撤回し、再度作成することが可能なこと等の便利さがあり、相続が発生した際には、遺言者が希望した方(最大3 人まで)に対して法務局から通知が行われ、家庭裁判所の検認の必要なく、遺言書情報証明書の取得が可能になります。

この制度は自分自身が書くことができる、動くことができるということが大前提です。体力が弱り、あるいは病気等のために、手書きが困難となった場合には、自筆証書遺言をすることはできません。また、寝たきりになって動けなくなってしまうと、法務局に出向くこともできないので、一度作った遺言書の内容を変えたいと思っても、対応することができなくなってしまいます。
このような状況を回避することができるのが公正証書遺言です。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が公証役場の公証人に口頭で遺言の内容を伝え、公証人が作成する遺言書のことです。
「公正証書」とは、第三者である公証人が頼まれて作成する公文書のことです。公文書なので証明力と執行力があり、法的紛争が起こった際にも信頼性に優れています。
公正証書を作成する公証人とは、公証事務を行う公務員で、原則として裁判官や検察官、法務局⾧などを⾧く務めた法律の専門家で、公募に応じた者が公証人法に基づいて法務大臣に任命されます。
他の方法よりも費用はかかりますが、遺言者の自書が不要であったり、寝たきりの場合でも認知能力さえしっかりしていれば、公証人が自宅や介護施設まで出向いて作成してもらうことが可能あったり、裁判所の検認が不要であったり、原本を公証人役場で保管してもらえるので紛失や勝手な書き換えを防ぐことができるというメリットがあります。

このように遺言書にはすでにいくつかの種類が用意されていますが、今の時代を反映した新たな遺言の方法の創設が検討されています。
それが、「デジタル遺言」です。

デジタル遺言とは

デジタル遺言とは、自筆証書遺言のデジタル化に向けて検討されている制度です。

すでにデジタル遺言を作成する民間サービスはありますが、法的な効力はありません。この制度が創設されれば、今までは手書きしか認められていなかった自筆証書遺言が、これからは法的効力を持ってインターネット上で作成・保管できるようになるといったことが予定されています。
スマートフォンやパソコンでの作成が可能になり、フォーマットなどを利用できるため、手書きよりも作成の負担が軽く、書き漏らしを防ぐことが期待できます。

また、紙で保存する自筆証書遺言と比べ、紛失のリスクを抑えることが可能です。さらに、デジタル技術によって、遺言書の改ざんを防止する効果も期待できます。
デジタル遺言が浸透することで、終活がデジタルで完結できれば、都心や地方など場所による格差を解消する効果も期待できます。
政府は、2024 年3 月に新制度の方向性を提言する予定ですが、デジタル遺言制度の創設に関する主な問題点として取り上げているのは下記のとおりです。

〇自身が認識し理解しながら作成する自筆証書遺言と同程度の本人の意思と真意を担保することができるかどうか
〇電子文書、映像や音声等、どのような手段を遺言として認めるか
〇今後相続にまつわる書類について、デジタル申請、データ交付を行っていくかどうか

一番のネックとなるのは「遺言者本人の意思と真意の担保」になろうかと思いますが、今後は、文書だけでなく映像や音声を駆使した遺言を法的に認めることも検討事項に加えられています。これらが実現できれば、文字が書けなくても、書式を気にしなくても、意思能力が明確で、話すことさえできれば遺言を残すことができます。

併せて、デジタル技術によって保存された遺言を相続開始の際に、相続人がインターネット上で請求し、データでの交付を行うことも検討されています。
前述しましたとおり、どこに住んでいても分け隔てなく手続きが行えるということは、都会と地方の手続き上の格差をなくすという大きな役割を果たす第一歩となり、今後また起こるかもしれない新型コロナウイルス感染症の時のようなパンデミックが起った際にも、大変便利な制度となり得ることが想定されます。

デジタル技術の駆使や、民法の改正によって政府はどこまで、「デジタル遺言」を実現させることができるのか、今後に注視しつつ、また進展があり次第ご報告したいと思います。

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