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コラム2023.5.1

【コラム】贈与税とみなし贈与

筆者:五島 学

はじめに

令和5年度税制改正においては、「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」をテーマに、相続時精算課税制度の見直し、及び相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間についての見直しが行われます。今後も高齢化が進むため、現役世代への円滑な資産移転と税負担のバランスをとることが政策上の大きなポイントといえます。
今回のコラムでは、贈与税についての基本的な仕組みと、当事者が贈与する意図がなくても贈与税が課税されることになる、いわゆる「みなし贈与」について解説します。

贈与税とは

・贈与税の課税関係

贈与税は、贈与により財産を取得した場合に課税されます。財産を受取った側に課税が行われるため、納税義務者は受贈者となります。そもそもなぜ贈与税が必要なのかというと、贈与税の課税がない場合、本来、相続税が課税される財産を有しているにもかかわらず、生前に親族等に財産を贈与することで、相続税を免れることが可能となってしまうためです。このことから、贈与税は相続税の補完税であるともいわれています。

・贈与税額の計算

受贈者が、その年1 月1 日から12 月31 日までに贈与により取得した財産に基づき贈与税額を計算します。税率は10%~55%の累進課税であり、贈与を受けた金額が大きくなるほど税率が高くなる仕組みです。よく勘違いされるポイントとして、「贈与者が」いくら財産を贈与したかで税額が決まるわけでない点があげられます。実際には、「受贈者が」いくら財産を取得したかにより贈与税の計算が行われます。そのため、複数人から贈与を受けた場合には、贈与者ごとではなく、受贈した財産の合計額に対して税額・税率が決まりますのでご注意ください。

・申告と納税

受贈者が、贈与を受けた年の翌年2 月1 日から3 月15 日までの間に申告及び納税することになっています。申告期限は所得税の確定申告と同じになります。

・贈与税額計算の流れ

例えば、310 万円の現金の贈与を受けた場合には、贈与により取得した財産(310 万円)から基礎控除(110 万円)を差し引いた200 万円に対して10%の税率を乗じた20 万円が納税額となります。

310 万円-110 万円=200 万円(課税価額)
200 万円×10%=20 万円(贈与税額)

一般に、「贈与は110 万円の範囲内でするとよい」と言われるのは、基礎控除があるためです。例外もありますが、110 万円以下の贈与については、贈与税は発生しません。

みなし贈与について

民法上、贈与により取得したものではない財産であっても、税務上、実質的には贈与により取得した場合と同様の経済的利益を受けたときは、課税の公平を図る観点から贈与により取得したものとみなして、受けた経済的利益を贈与税の課税対象としています。つまり、当事者が贈与の意思がなくても贈与税が課税されるケースがあるのです。これを実務では「みなし贈与」といいます。みなし贈与が問題となるケースは多々ありますが、今回は実際に筆者が経験した中から、よくある2つの事例を紹介します。

みなし贈与の具体例①(低額譲渡)

・父親が土地(時価5,000 万円・取得価額2,000 万円)を息子に2,000 万円で譲渡するケース

売主である父親は、取得価額と譲渡価額が2,000 万円と同額のため所得税は課税されません。
買主である息子は、時価との差額3,000 万円分について「得」をしていることになるため、譲渡価額が時価よりも著しく低い価額と判断され、時価(5,000 万円)と譲渡価額(2,000 万円)の差額分(3,000 万円)の贈与を受けたものとみなされます。

・贈与税額計算

3,000 万円-110 万円=2,890 万円(課税価格)
2,890 万円×45%-265 万円(控除)=1,035.5 万円(税額)

この取引の背景は、父親が土地の取得価額で息子に譲渡する分には何も問題ないだろう、と考えたことにあります。
時価を考慮せずに譲渡価額を決定してしまったことにより、思わぬ高額の贈与税が発生してしまったケースです。

(みなし贈与における低額譲渡の判定について)

個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされます。ここでいう時価とは、不動産等の場合には通常の取引価額に相当する金額を、それ以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。著しく低い価額の判定にあたっては、所得税法でいう2 分の1未満という基準ではないので注意が必要です。

みなし贈与の具体例②(自宅リフォーム)

・建物の所有者は父親で息子夫婦と同居するにあたり、建物が古くなっていたため大幅なリフォームを実施、そのリフォーム費用を息子が全額支払ったケース

建物の登記上の所有者が父親であるため、父親が所有している建物に対して息子が経済的価値を高める行為を行ったことになります。よって、リフォーム費用相当額について息子から父親への贈与があったものとみなされ、父親に贈与税が課されます。実はこのケース、事前に相談をいただければ以下のような回避策をとることが可能でした。

対策:建物をリフォーム前に親から息子夫婦へ贈与

建物が古い場合、建物の固定資産税評価額が低額である可能性が高くなります。そのため、建物を贈与しても贈与税が発生しない、もしくは、少額の贈与税の負担で済むことがあります。事前に建物の贈与を行い、その後リフォームを実施することにより、建物の所有者とリフォームの実施者が同一者となり課税関係は生じないことになります。

終わりに

上記の事例以外にも、同族会社における株主間贈与など、みなし贈与は広範囲にわたり検討が必要な概念です。また、具体例②のように事前に分かっていれば課税を防げたものが、事後に判明したため防げないケースも多々あります。
「この取引は誰かに経済的利益が発生するか?」という感覚を頭の片隅に入れ、思い当たる取引がある時には、取引を実行する前に相談することが大切となります。

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