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コラム2012.10.1

【コラム】国税庁 移転価格チェックシート作成

筆者:奥津

国税庁はこのほど、自社の移転価格の現状を把握できる「移転価格に関する取組状況確認のためのチェックシート」を作成しました。

目的

移転価格税制は、海外の関連企業との取引が、恣意的に低い(又は高い)価額で行われた場合に、その取引が通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして、実際の取引価額と独立企業間価格との差額に課税する制度です。
移転価格課税を受けた場合、一般に課税額は大きく、また課税によって生じた二重課税の解消のために納税者も税務当局も大きな負担を求められることになります。
国税庁は、移転価格の問題を未然に防ぐためには、企業の自発的かつ適正な移転価格に関する対応が必要と判断し、そのツールとしてチェックシートを作成しました。

内容

チェックシートは国内、あるいは国外で移転価格問題を生じる多くの失敗例を基に作成されており、具体的な失敗例としては以下のようなものがあります。

  • 自社が海外の関連企業と取引を行っていても、それが移転価格税制の対象になる取引であることを認識していない例(移転価格税制についての理解不足)
  • 税務担当部署からの税務リスクについての意見を聞かずに事業担当部署の事業戦略に基づいた価格設定を承認し、結果として移転価格問題を生じる例(トップマネジメントの関与や認識不足)
  • 役務提供取引、無形資産取引について、取引の存在自体を認識せず、対価の受払いも行われず、移転価格問題を生じる例(国外関連取引の実態・問題点の認識不足)


これらの失敗例を基に、以下7つの観点から31のチェック項目を設定しています。

  • 移転価格税制についての認識
  • トップマネジメントの関与
  • 国外関連取引の実態・問題点の把握
  • グローバルな移転価格ポリシーの策定
  • 移転価格算定手法を念頭に置いた取引価格設定
  • 海外の関連法人における移転価格対応(親会社のガバナンス)
  • 税務当局とのコミュニケーション


具体的なチェック項目をいくつか挙げてみましょう。

□ 我が国における移転価格税制の概要を知っていますか
□ トップマネジメントが移転価格問題への対応に関与・承認していますか
□ 関連法人との取引やその内容を把握できる体制になっていますか
□ 日常的に関連法人と税務に関するコミュニケーションが取れる体制になっていますか

チェックシートでは、各項目について4「十分認識している」、3「概ね認識している」、2「認識しているが十分ではない」、1「認識していない」の4段階で現状を確認する内容となっています。ただし、国税庁は全ての項目について高水準の対応を採らなければならないというものではなく、企業の規模、取引の量、移転価格問題のリスクの大きさ、そして対応のために必要なコストの大きさなどを考えながら、必要な対応を選択してほしいとしています。

おわりに

このチェックシートは当面は大企業を対象に配布されます。
しかし、近年の経済の国際化を背景として海外に直接投資する中小企業の数は増えてきており、大企業だけでなく、中小企業にとっても移転価格の問題は避けて通れないものとなっています。
今回のチェックシートを活用して、自社の現状を把握されてみてはいかがでしょうか。

(注)チェックシートは国税庁HPでは公表されておらず、税務通信3215号(2012年6月4日)に掲載されております。

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