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コラム2015.8.1

【コラム】上場株・非上場株に係る譲渡損益の通算ー事業承継との関係について

筆者:高橋

平成25年度税制改正の概要-上場株・非上場株に係る譲渡損益の通算について

個人所得税及び住民税の計算上、上場株式に係る譲渡損又は譲渡益と、非上場株式に係る譲渡益又は譲渡損とは相殺して申告することができますが、この取扱いが平成25年度税制改正により変更されました。具体的には、平成28年1月1日以後の譲渡より、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場株式等に係る譲渡所得等が別々の分離課税制度とされるため、上場及び非上場間の損益通算ができなくなります。

事業承継で想定される事実関係

事業承継の一環として行われる同族株主間の株式異動は、一般的には譲渡か贈与で行われますが、本稿では譲渡に焦点を絞ってお話をしたいと思います。

  • 株式の含み益
    毎期継続的に利益をあげている場合には、支払配当を差し引いた残高分だけ、純資産が積み上がっていくことになります。自社株式の譲渡対価の決定にあたって純資産価額を参酌することが多い中小企業では、多額の含み益を抱えているケースが多いものと考えられます。
  • 株式の譲渡価額の決定
    所得税法上、非公開株式の評価について、画一的に定められたものはありません。しかし、個人から法人への低額譲渡等が行われた場合は、時価譲渡とみなして課税するための「時価」について、所得税法基本通達23~35共-9および所得税法基本通達59-6で定められており、当該通達を他の場面にも準用して時価を算定することが実務上多く行われています。

    いずれの価額を選択するかにあたっては、評価の目的や事案の背景、企業規模と状況、株主および売主ならびに買主などの諸状況を勘案する必要がありますが、同族オーナー系の中小企業の場合には、このうちの純資産価額(又は純資産価額と類似業種比準価額との折衷)を採用するケースが一般的には多いといえます。

上場株・非上場株に係る譲渡損益の通算

経営者等が保有する自社株式に多額の含み益があるケースで、かつ、含み損のある上場株を保有している場合には、上場株・非上場株に係る譲渡損益の通算が可能な平成27年中に売買を完了させることにより、譲渡益の圧縮と事業承継の両立が可能となります。

相続対策

事業承継による株式譲渡が、父から子に対して行われるような場合には、事業承継だけでなく相続対策という側面も併せもつこととなります。

  • 株価上昇リスクの排除
    継続的に利益をあげている会社の場合、純資産の増加に伴い株価も上昇していく傾向にありますが、売却により株式という財産が金銭という財産に変わるため、株価上昇に伴う相続財産の増加リスクを防ぐことができます。
  • 譲渡対価である金銭の有効活用
    教育資金贈与などの非課税制度の適用が可能となるため、相続財産の圧縮を図ることができます。
  • 株式買取資金を有しない場合
    譲渡対価は親から子への貸付となりますが、当該貸付金を当該借入れをした子に財産として相続させることにより、相続後の債権債務の相殺が可能となります。親子間の借入について、無利息貸付とした場合に金利相当分を贈与認定されるリスクや、そもそも返還予定のない貸借について貸借そのものが贈与と認定されるリスクがありますので、専門家にご相談下さい。
    なお、金融機関からの借入れも選択肢の一つであり、この場合には親が受領する譲渡代金について上記②の対応も可能となりますが、別途、返済原資の問題や、返済までにかかる利息合計と親からの貸付けとした場合の相続税額との比較シミュレーション等が必要となり、これを経た上でなければ有利不利の判断はできないためご留意下さい。

終わりに

事業承継を検討されている経営者の方で、含み損のある上場株を多数有している場合には、自社株及び上場株の売買の必要性について、平成27年中の検討が望ましいといえます。

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