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コラム2015.11.1

【コラム】財産債務調書

筆者:佐藤 亮介

はじめに

従前においては所得税の確定申告書に記載する各種所得金額の合計額が2千万円を超える者については、12月31日における財産および債務の状況を記載した『財産債務明細書』を所得税の確定申告書に添付して提出しなければならないこととされておりました。平成27年度税制改正において、所得税・相続税の申告の適正性を確保する観点から『財産債務明細書』を見直し、一定の基準を満たす者に対して『財産債務調書』の提出を求める制度が創設されました。
法施行後の最初の『財産債務調書』の提出期限は平成27年分の所得税の確定申告書の提出期限である平成28年3月15日であることから、提出に向けて概要をご説明します。

提出義務者について

所得税の確定申告書を提出すべき者で、その年分の各種の所得金額が2,000万円超であり、かつ、保有財産(国外財産を含みます)が下記①または②のいずれかを満たしている場合に提出が必要となります。

  • その年の12月31日における保有財産の価額の合計額が3億円以上である場合
  • その年の12月31日において保有している有価証券などの国外転出時課税(平成27年9月1日のニュースレターをご参照下さい。)の対象資産の価額の合計額が1億円以上である場合


平成25年度税制改正で国外財産が5,000万円超の場合に『国外財産調書』を添付することとされておりますが、例えば、所得金額の要件および上記①又は②を満たし、かつ、その保有財産のうちに国外財産が5,000万円超含まれている場合には、『財産債務調書』の提出に加え、『国外財産調書』を提出する必要があります。

保有財産の価額について

財産債務調書にはその年の12月31日における保有財産の区分、種類、用途、所在、数量、価額および債務の金額などを記載します。 この保有財産の価額は、その年の12月31日における『時価』又は時価に準ずるものとして『見積価額』によることとされております。
『時価』とは不特定多数の当事者間で取引が成立すると認められる価額をいい、その価額は、動産、不動産については専門家による鑑定評価額、上場株式については金融商品取引所の公表される同日の最終価額などをいいます。一方で、提出する方の事務負担を軽減する目的で『見積価額』で算定することを認めています。この『見積価額』は、その財産の種類に応じて、次の方法で算定した価額となります。

  • 事業所得の基因となる棚卸資産…その年の12月31日における「棚卸資産の評価額」
  • 不動産所得、事業所得、雑所得又は山林所得に係る減価償却資産…その年の12月31日における「減価償却資産の償却後の金額」
  • ①、②以外の資産…その年の12月31日における「財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額」


③については、財産の種類に応じて、国税庁の財産債務調書FAQを参考に見積価額を算定する必要があります。

加算税等の軽減・加重措置

『国外財産調書』と同様、提出を促進するため加算税に関する加重・軽減の規程が設けられております。
『財産債務調書を提出期限内に提出した場合』には、財産債務調書に記載がある財産債務に関する所得税等(所得税及び復興特別所得税)又は相続税の申告漏れが生じたときであっても、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%軽減されます。
一方で『財産債務調書の提出がない場合又は提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産債務の記載がない場合』に、その財産債務に関する所得税等の申告漏れが生じたときは、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税について、5%加重されます(相続税については加重されません)。

おわりに

『財産債務調書』の提出を失念してしまうと加算税に対する軽減措置が無いばかりか、加重措置を受けてしまう場合があります。事前に保有している財産の価額を把握し、提出義務の有無を確認しておく必要があると考えます。また、作成する際には所得税又は相続税の確定申告書との整合性がとれているかご確認ください。

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