東京都港区の税理士法人 あいわ税理士法人/あいわAdvisory株式会社

 
お問い合わせ

ニュースレター・コラム

コラム2019.9.1

【コラム】譲渡制限付株式を活用した株式報酬制度の事例

筆者:兼古 督士

はじめに

平成28 年度及び29 年度税制改正において、役員給与の損金不算入制度の見直しが行われています。そのうちの一つとして、役員に対する一定の譲渡制限付株式(いわゆる「リストリクテッド・ストック」、以下「RS」という。)が、事前確定届出給与の範囲に含まれることとされ、損金算入の対象になったことが挙げられます。税制改正から約3 年が経過し、RS を役員に対するインセンティブ報酬として導入する企業が増えています。新聞報道(2019 年5 月28 日日本経済新聞朝刊)によれば、上場企業の約42%(約1,500社強)が、役員に株式で報酬を渡す制度を導入しており、そのうちRS を導入している企業は約600 社であり、RS に限れば前年比1.7 倍という勢いで増加しています。一方、従来からあるストックオプション制度については、株価下落が直接的な損失につながらず経営のインセンティブになりづらいことが敬遠されているとされ、その導入数は低調となっているようです。

インセンティブ報酬の一類型としてのRS

RS とは、譲渡制限を付した株式を事前に交付し、勤務の状況に応じて当該制限を解除する株式報酬制度において交付されるその株式のことをいいます。RS は下記の要件をすべて満たすものをいいます。

  • 一定期間の譲渡制限が設けられていること
  • 法人により無償取得(没収)される事由(無償取得事由)が定められていること
  • 役務提供の対価として役員等に生じる債権の給付と引換に交付される株式等であること


役員が交付を受ける株式が、役務提供を受ける法人又はその関係法人が発行する適格株式(内国法人又は関係法人が発行する株式で、市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式をいいます。)である場合には、事前確定届出給与の対象となる交付物に該当することから、その交付した株式を役員給与として損金の額に算入することが可能となります。

役員退職金としての活用事例

IR 情報をみると、今年の株主総会からRS を導入する企業が多数存在します。各社のIR 情報から譲渡制限期間、譲渡制限の解除条件(上記2.①)及び無償取得事由(上記2.②)を確認すると、役員の退職金として活用し、中長期的な株価の上昇に貢献することを目的としたインセンティブ制度として活用していることが伺えます。ここでは役員退職金として活用している一例をご紹介します。以下、譲渡制限期間を「A」、譲渡制限の解除条件を「B」、無償取得事由を「C」として記載します。

【京セラ】
A…2019 年7 月25 日から2049 年7 月24 日までの間
B…取締役については最初に到来する定時株主総会の開催日まで(中略)継続して、取締役(中略)の地位にあったことを条件として、譲渡制限期間の満了時において、割当株式の全部につき、譲渡制限を解除する。その他任期満了等正当な理由による退任時。
C…譲渡制限期間の満了時点、又は、任期満了等正当な理由による退任の直後の時点において、譲渡制限が解除されていない割当株式を無償で取得する(退任の場合に譲渡制限の解除対象となる株式数は、合理的な方法によって計算した株式数とする)。


【積水ハウス】
A…2019 年6月13 日~2049 年6月12 日
B…取締役等が譲渡制限期間中、継続して、取締役(中略)の地位にあることを条件として、割当株式の全部について、譲渡制限期間の満了時点で譲渡制限を解除する。その他任期満了等正当な理由による退任時。
C…上記「C」と同様。


【テレビ朝日HD】
A…2019 年7 月23 日~2049 年7 月22 日
B…割当対象者が、譲渡制限期間の開始日以降、最初に到来する定時株主総会の開催日まで継続して、取締役の地位にあったことを条件として、期間満了時点をもって、譲渡制限を解除する。その他任期満了等正当な理由による退任時。
C…上記「C」と同様。

法人と個人の処理

上記のような活用方法によれば、役員個人は退任によって譲渡制限が解除された株式について退職所得として取扱われ、RS を導入した法人側では、その交付した株式が譲渡制限解除時に役員退職金として損金算入されます。これは法人側の損金算入時期が「給与等課税額が生じることが確定した日」と規定され(法法54 条1 項)、この確定日は「無償取得をしないことが確定した日」として解されているからです。上記の例では、いずれも「譲渡制限解除日=無償取得しないことが確定した日」となっています。

譲渡制限期間の満了日

国税庁は譲渡制限期間の満了日(譲渡制限解除日)を「〇月〇日」といった確定した日付ではなく、退任日とした株式も特定譲渡制限付株式に該当するとした文書回答事例を公表しました(回答年月日:2019 年6 月25 日https://www.nta.go.jp/about/organization/osaka/bunshokaito/hojin/190625/index.htm)。今後は、譲渡制限期間の満了日を退任日とする制度設計が増えていくものと思われます。

ニュースレター・コラム一覧へ戻る