筆者:橋本 伸悟
令和2 年度税制改正において、国内の事業会社またはその国内CVC(Corporate Venture Capital)が、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式を一定以上取得した場合、その株式の取得価額の25%を所得控除できる制度が創設されました。また、令和5 年度税制改正により、令和5 年4 月1 日以降にスタートアップ企業の成⾧に資するM&A(議決権の過半数の取得)を行った場合、その取得した発行済株式についても同制度の対象となりました。
この制度は令和8 年3 月31 日までの出資や取得が対象であり、適用期限まで残り1 年を切っている制度となります。本稿では、令和5 年4 月1 日以降の出資を対象に、制度の概要と仕組みについてご説明します。
確定申告書に経済産業大臣の交付する証明書を添付する必要があります。証明書交付申請は、申請書類の準備や当局の審査などに時間がかかるため、適用を受ける場合は、遅くとも確定申告書の提出期限の4 か月前には準備を始めることをお勧めします。
また、制度適用後、新規出資型は3 年間、M&A 型は5 年間、経済産業大臣への継続証明書交付申請が必要になります。さらに、M&A 型はM&A から5 年以内にM&A をしたスタートアップ企業が成⾧要件(売上高成⾧類型、成⾧投資類型、研究開発特化類型の3 類型があり、それぞれ数値要件があります。)を達成したことを証明するための手続が必要となり、成⾧要件が未達成の場合、5 年後に所得控除した額を益金算入しなければなりません。
なお、新規出資型及びM&A 型ともに、株式を譲渡した場合や配当金を受けた場合等、益金算入をしなければならない複数の(かつ細かい)要件があるため留意が必要です。
この制度は「オープンイノベーションに向けた出資・M&A(純投資等を除く)であること」が重要になります。
経済産業省への申請においてもオープンイノベーションの取り組みの内容を記載した資料の提出が求められます。そのため、申請のポイントはいかにオープンイノベーションの取り組みをアピールするかにかかっています。