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コラム2018.9.1

【コラム】一般社団法人等に関する相続税の見直し

筆者:高屋敷 神楽

はじめに

同族関係者が理事の過半を占めている一般社団法人について、その同族理事が死亡した場合、その一般社団法人の財産を対象に、その一般社団法人に対し相続税が課税されることとなりました。

税制改正の背景

平成20年度の公益法人制度改革は、「民間が担う公益活動の推進・寄附税制の拡充」を目的として整備されたものであり、このような目的の下で、一般社団法人又は一般財団法人(以下、「一般社団法人等」という)は準則主義(登記)により容易に設立可能とされています。
ところが、本来の目的である民間が担う公益のためではなく、一般社団法人等の税制上の有益性を利用した相続税・贈与税の租税回避スキームを目的として設立されるケースが散見されるようになり、課税の公平性を欠くものとして以前より問題視されていました。
平成30年度の税制改正は、本来の目的を逸脱した一般社団法人等の利用についてメスをいれるものであり、租税回避行為に濫用されることに対する規制措置が講じられます。

改正前の制度内容

一般社団法人等には持分がないため、個人からひとたび一般社団法人等に財産を移転してしまうと、一般社団法人等が所有している財産については相続税が未来永劫課税されないにもかかわらず、財産を拠出した個人やその親族が(代表)理事に就任することで事実上その一般社団法人等を支配し続けることが可能となっており、さらに、その個人から次世代に理事の地位が承継された際の課税関係は条文上明確にされていないという問題が指摘されていました。

改正の内容

特定一般社団法人等(※1)の理事である者(相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人等の理事であった者を含む)が死亡した場合には、当該特定一般社団法人等が、当該特定一般社団法人等の純資産額をその死亡の時における同族理事(被相続人を含む)から遺贈により取得したものとみなして、当該特定一般社団法人等に相続税を課税することとされます。
この場合、その相続税の額から、贈与等により取得した財産について既に当該特定一般社団法人等に課税された贈与税等の額を控除することとされます。

【特定一般社団法人等に課税される相続税額】

  • 遺贈により取得したものとみなされる額=特定一般社団法人等の純資産額/死亡の時における同族理事(※2)の数
  • ①につき一般社団法人等に相続税を課税(ただし既に課税された贈与税額を控除する)

(※1)「特定一般社団法人等」とは、次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいいます。

  • 相続開始の直前における同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超えること。
  • 相続開始前5年以内において、同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。


(※2)「同族理事」とは一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等以内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいいます。

適用時期

平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用されます。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の当該一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用し、平成30年3月31日以前の期間は上記※1②の2分の1を超える期間に該当しないものとします。

終わりに

一般社団法人を用いた相続税節税スキームは今後用いることが厳しくなると見込まれます。

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